2024年あけましておめでとうございます。
新NISAが始まり注目度も増すなか、ビットコインマイニング企業に着目される方も多いと思います。
今回は、数あるマイニング企業の中でも、高い計算力を誇ったコア・サイエンティフィック社がなぜ2022年12月下旬に破産申請したのかをまとめます。
コア・サイエンティフィック社とは
破産前の概要
Core Scientificは、ブロックチェーンと人工知能のホスティング、トランザクション処理、アプリ開発を提供する企業です。シアトルに本拠を置くこの会社は、2017年にDarin FeinsteinとMike Levittによって設立され、総額で1億1500万ドル以上の資金を調達しました。元マイクロソフト幹部のKevin Turnerが2018年にCEOとして就任し、100%カーボンニュートラルを目指す会社のミッションを率いましたが、2021年5月19日に退任しました。2021年4月28日には、ブロックチェーンマイニング機器メーカーのBitmain Technologies Limitedとの長期パートナーシップを発表し、BitmainのS19マイニングユニットを18万8000台以上購入する合意をしました。https://golden.com/wiki/Core_Scientific-YXMYZGB
ビットコインのマイニング能力
ハッシュレートは、ビットコインマイニングで重要な指標です。これは、マイニング装置が1秒間に行うハッシュ計算の数を表します。ハッシュとは、データを一定の長さの文字列に変換する計算のことで、ビットコインなどのブロックチェーン技術で使われます。ハッシュレートが高いほど、そのマイニング装置やネットワークはより多くの計算を速く行えるため、新しいブロックを見つけやすくなります。つまり、ハッシュレートが高い企業ほど、ビットコインの採掘が効率的に行えます。
破産申請する前の月、2022年11月の各マイニング企業のハッシュレートを以下に示します。コア・サイエンティフィック(ここでは$CORZ)は、10 EH/sを超え堂々の首位でした。
これほど計算力が高くビットコインを採掘していたコア・サイエンティフィック社はなぜ破産申請したのでしょうか?
株価の推移
NASDAQ上場から株価は以下のような推移です。
なぜコア・サイエンティフィック社は破産したのか?
多くの従業員が働いている中で、破産にまで至ってしまうということは多くの複合的な理由があると思われますが、ここではコア・サイエンティフィック社が起こしたいくつかの誤算について解説します。
- 電気料金の高騰により、ビットコイン採掘にかかるコストが増加した。
- ビットコインの価格低迷
- マイニング施設拡張のために借りてきた借金を上記理由により返すのが困難になった。
上記2つについては、イメージしやすいと思います。電気料金の高騰は仕入れ価格の高騰を意味します。その一方で採掘できるビットコインの価格が低迷しているのですから、儲からないのは当然です。
3つ目については、ビットコイン特有の問題なので詳しく解説します。マイニング企業のビットコイン採掘能力、つまり計算力を示す指標にハッシュレートというものがあります。各企業で計算力を上げるためには、より高性能なマイニング機器を購入して揃える必要があります。以下のようなマイニング機器は一台約5000ドルしますが、これを7000台揃えても1.4 EH/sの増加にしかつながりません。ただ、このような設備の拡張には年単位の時間がかかるため、他の企業に借金をしながらも拡張を進めるのです。
以下の表のように、高値圏だった2021年にも売却せずに所有していたビットコインを暴落した2022年に大半を売却しています。本来ならより高値で売却したかったビットコインを、借金の返済のため底値で売ってしまうほど、財政的には余裕のない状況であることを示しています。そしてそれでも最終的には破産申請を行いました。
今後への知見
コア・サイエンティフィック社の破産事象を考えると、マイニング企業にとっては、①ビットコインの保有戦略が賢明であること。②設備拡張が計画的であること。が重要だと考えられます。(適切なタイミングでビットコインを売却して利益を確保しつつ、現実的な設備拡張を進めれば破産しないのではないか?と思いますよね。)今後は、他マイニング企業の戦略についてまとめていきたいと思います。
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